沖縄大学 地域研究所

地域幸福論

「地域幸福論」とは?


幸福とは何か。みんな仲良く平和で豊かに暮らす地域。健康で笑いが絶えない人々。こうした光景は幸福の重要な側面だ。エラスムス大学の「世界幸福データベース」主宰者によれば一幸福の度合いは、その国に住む人の「人生への満足度」で測る。家族、仕事、住まい、仲間、文化環境などの充実は幸福度の上昇につながる。環境意識や民主主義の普及度も不可欠な要素だ。幸福論は無味乾燥な調査結果の羅列ではない。地域で光り輝くものを自ら見つけてゆく過程。それが地域幸福論として形づくられてゆくのだろう。
 なお本講義は離島県沖縄の現状を直視し展望を開くため、積極的に離島での研究・実践活動を奨励する。


 4月10日 地域幸福序論:ブータン、逝きし世の面影 講師:緒方修(専門:メディア論)
幕末、明治の日本を訪れた異邦人は次のような感想を残している。「厳粛な反省―変化の前兆―疑いもなく新しい時代が始まる。あえて問う。日本の真の幸福となるだろうか。」その後の欧米文明が日本の幸福な生存システムを壊したのではなかろうか。ブータンは日本の轍を歩むことなく例外的な成功をおさめるのだろうか。今後研究してゆきたい。
 4月17日  「Serendipity、多文化社会スリランカにおける精神文化から学ぶ」 講師:ディリープ・チャンドララール(専門:言語学)
スリランカは民族、言語、宗教などの面で多文化社会である。スリランカでは誰もが知っている「ジャータカ物語」は、お釈迦様が前世に修行していたときのエピソードを通してその生き方を教える。精神文化の中にある仏教の大切な教え(本願、プージャなど)の多くは、コミュニティにおける家族、隣人、友人たちとのつながりと共同作業によって実践される。 
4月24日   土曜教養講座①「自立した地方政府の確立を目指して」  講師:増田寛也氏(元総務大臣・元岩手県知事) 
 5月15日    「ふだんのくらしのしあわせ」ワークショップ  講師:西尾敦史(専門:社会福祉、コミュニティワーク)
なにか特別に立派な人、奇特な人がやっているのが「福祉」だというイメージがありますか? それは身近ではない他人事の福祉、遠い福祉のイメージです。福祉を「私」から出発する「ふだんのくらしのしあわせ」と捉え、遠くの出来事ではなくて、まさに私たちの日常的な生活の中で感じられるしあわせとして考えてみたいと思います。 
 5月22日  「復帰と沖縄のアイデンティティ」 講師:仲地博(専門:行政法)
「沖縄のこころとは?」という問いに対して、当時の沖縄県知事・西銘順治氏は「ヤマトンチューになりたくてなりきれない心だろう」と語った。戦前・戦時中の日本同化政策、アメリカ占領時代に続いて復帰後にもみられた、日本への批判と憧憬という屈折した思いが投影される。同化から自立、個性重視へ。アイデンティティを確認することは、自立の意識を育てることだ。 
 5月29日  「宮沢賢治から村上春樹へ 等価交換にとらわれない贈与と幸福について」 講師:西尾敦史(専門:社会福祉、コミュニティワーク)
ブックレビューによって、次のような考え方について問いかけた。――幸福の見方と貧困の見方(見田宗介「現代社会の理論」)、交換と贈与(内田樹「レヴィ・ストロースと終わりなき贈与」)、「みんなのさいはひ」(宮沢賢治)のための贈与、そして与えることの根源的な幸せ(シルバァスタイン「大きな木」、村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」)―― 
 6月 5日  「持続可能な地域づくりと持続可能性指標」 講師:朝賀広伸(専門:行政法、環境法)
持続可能な社会へ向けて、パラダイムの転換が求められている。国連をはじめ、世界各地で様々に試みられている、持続可能性の概念が目配りするテーマと指標化の試みを紹介。さらに、それらの評価指標の課題について言及した。また、幸福度を考える上で持続可能性指標はいかなる点で参考になるのか、問いかけた。
 6月19日  「ゆたかさとほほえみの両立に向けて」  講師:崔珉寧(専門:経営、イノベーション論)
物質的な欲求を満たす経済的しあわせ(ゆたかさ)と、精神的な欲求をみたす社会的しあわせ(ほほえみ)に、大きなアンバランスが生じている。資本主義ベースの経済発展が悪いのかというと、そうではない。車に例えるなら、資本主義=エンジンの発達に、それを制御すべき民主主義=ブレーキの発達が追いついていないことが、ゆたかさとほほえみのアンバランスを拡大させている。
  6月26日  土曜教養講座②「ブータンから考える沖縄の幸福」第1部『島嶼社会幸福論』
第2部『ブータンに見る地域の幸せ~ヒマラヤ小王国の暮らし~』
講師:松島泰勝(龍谷大学)

報告:沖縄大学ブータン調査チーム
日本は「幸福のパラドックス」に直面している。所得が増えても幸福感を感じない。日本復帰後、沖縄開発庁(内閣府沖縄担当部局)は日本本土をモデルにして、GDPの考え方に基づく経済計画をつくり開発を推し進めてきたが、経済格差、補助金依存、環境破壊等多くの課題が山積するようになった。琉球弧の島々には、開発の影響を受けやすい繊細な生態系や貴重な動植物が存在する。珊瑚礁を含む豊かな島の自然や、多様でユニークな歴史・文化、ゆいまーる社会のなかで島それぞれの幸福の形が形成されてきた。世界のどこにでも適用可能な開発理論や開発レベルを測るモノサシを島々に適用すべきではない。(松島氏) 
 7月 3日 フィールドワーク 於:久高島 
 7月10日  「ヒマラヤ地域の教育支援」  講師:稲葉耶季(名護簡易裁判所判事)
人と人が憎しみ合う状況に対峙したり、米軍所有地関連訴訟での国家行政との軋轢があったりした判事生活の中で、チベット仏教の教えとヒマラヤ山脈の風景に魅かれてヒマラヤ地域を歩き続けた。縁ができたインド北部のガネーシュプール村とネパールのムスタン郡マルファに、小中学校をつくり運営する活動をしてきたが、金を出し援助を続ける中で大きな失敗にも気がついた。あくまでも主体は地域の住民であり、援助されている人がいきいきとしているかを常に見ていることが大事。
7月17日 「地域農業と観光」 講師:小野啓子 (専門:都市計画、まちづくり)
7月24日  「地域幸福論構築に向けての若干の考察」 講師:桜井国俊 (専門:環境学)
7月31日 前期試験 

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